明るさではなく暗さを利用した設計手法で生み出す効果

 

普段クライアントと話をする時「暗さはどのくらいです」という言い方はしません。多くの場合明るいものを良しとする場面や感覚が先に立つからだと思います。

照度の一般的な基準は我々設計者は当然学んでいることですが、これは状況や人によって大きく感じ方が違うため、数値的根拠の説得力が低い要素の一つです。それはさておき本件では単純に明るい暗いという雰囲気の基準ではないところに『暗さ』を利用しました。

というのも基本のデザインコンセプトが決まりかけていた段階で私が参画させていただいた為、コスト面や工期の点で大きな変更は避けたいところでした。しかしながら十分な高さや広さが確保されていない中でBOXinBOX(主に大空間の中にいくつもの小屋のような空間を配置するようなつくり)の構成をするということでしたので、空間の余白があってこそのコンセプトイメージをうまく実現できない恐れを感じていました。

 

そこで全室個室の形態をとる点に着目し、明るさによって全体の空間の広さを良くわからないものにしてしまおうという狙いをつけました。それぞれの動線の停滞する場所だけが一定の明るさを保ち、あとは暗くしてしまうことに徹底することで、アトラクションのように先が見えにくくどこまで広がっているのかわからず、またそれぞれの小空間の開口から外の光が見えることで暗さの先に光があることの視覚効果が生まれ無意識的に広がりを感じる空間をつくっていきました。

 

 

担当者 / 園田 泰丈 ※内装意匠設計 サインデザイン