『場所』を補うだけの建築物という在り方、そしてデザインの手掛かり

 

建築士を志す過程で私自身を含めどんな凄い建築をつくってみせようかと思いを巡らせることは誰もがあると思いますが、続ければ続けていくほど良い意味で建築を執拗に操作することは減っていくように感じます。

 

古来より生物の住処は場所を見つけることから始まり、利用しながら機能をつけ足していったのだと思います。雨風をしのぐために洞穴に、外敵から身を守るために木の上に、生活利用の水のために川縁に…
現代の生活では場所選びに制限が多くその分より重要なものになっているのだろうと感じます。逆に良い場所さえあれば建築などそれを補う程度のものだと『場所』を目の前にして頭が下がる思いです。場所には建築よりもずっと昔からの歴史が刻まれており、大きく深い本質的な要素が詰まっているものだと感じているからです。

 

むしろ難しいのは整備された宅地での計画などで、決して条件が悪いわけでなく、むしろ現代の住宅に適した整備がなされているのでしょうが、きれいにリセットされているがゆえに特徴的な環境要素が少なく建築で補うべくデメリットも少ない。引出しを引くときに手をかける部分を『手掛かり』といいますが、設計の引出しに『手掛かり』が見当たらない場合は取手を取り付けるところからの試みをしたりするわけでこの難易度のほうが高い。

 

ではあらためて質の高い場所性を持つ敷地においての設計で何を評価いただくべきなのか。現時点で解答するなら、誠実さと謙虚さとそれに徹底する直向きな姿勢でしょうか。抽象的に聞こえますがそれは澄んだ眼差しでモノに映したとき確実に見えてきます。

 

 

LIXILメンバーズコンテスト2016 地域最優秀賞(中国) 受賞

担当者 / 園田 泰丈 ※設計・監理

 

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