否定されがちな表層的デザインについての見解

 

モダニズム建築の影響を受けた設計者は往々にしてシンプルな設計を心がける人が多いように感じます。

 

私自信も建築設計の勉強を始めたきっかけとしてミース・ファン・デル・ローエの名前があがります。設計を学んだ人は誰もが知っている、彼の名言とされる『less is more.』(より少ないことはより豊かなことだ)という言葉のとおり、大雑把に言うと無駄なものをそぎ落としたモノづくりにより洗練されたものができるという言葉です。

 

しかし伝統的な建築の中では非常に装飾的な部分も多くみられ、宗教的な意味や権力の象徴であったり、魔除けや目印などとして建築機能的に意味をなさない部位も様々にみられます。これらを無駄と見る人もいますが、広い視点で見るとその建築機能的というのは単に使用に際してのことだけでなく、前述のような様々な意味が込められており、また視覚的に与える印象は人の気持ちに変化をもたらしたりと非常に機能的なものとしてとらえることができるはずです。

 

メイクをして人柄が変わるように、装飾は表層的でありながら実に重要な効果をもたらす機能的要素であると考えます。

 

 

本件の依頼はテナントビルのファサード改装デザインをほぼ塗装工事のみでということでした。限られた条件と限られた手段にこそデザインの力で可能性を見出せたらという気持ちで臨んだ案件でした。

既存の正方形のパネルデザインが特徴的で施主様の思い入れもあったようでしたので、色をガラッと変えてそれを板チョコのようなデザインにしたらどうかという解答となりました。目地色の選定とツヤ感を十分に検討し、照明計画で演出を加えています。

 

修繕という概念にデザインを加えることで出店依頼の増加と集客効果が得られたのは表層的なデザインも侮れないということでしょうか。

 

担当者 / 園田 泰丈 ※外装意匠設計