全面通りと店舗の2つの関係性および既存を活かす目利きのデザイン

 

店舗が歩行者道路『通り』に面する場合、通りがかりの集客が見込めるため中の様子が伺えることや入りやすさを考慮することからオープンな店にすることが多くなります。しかしこの時、店内の利用者目線では見られている感覚になって落ち着かなかったり、あるいは一歩間違えるとむしろ入りづらい雰囲気を出してしまう懸念もあります。また、店舗が2階にある場合はアイキャッチとなるファサードデザインがつくりにくい事情も出てきます。その分店内に足を踏み入れた時の印象付けができるという利点があります。

ターゲットをどこに置くかという問題はさておき、店側はふらっと立ち寄れる気軽さを活かした集客力も欲しいが、他店と差別化した気品を出して客層と客数の固定化をしたいという矛盾も生まれます。

 

本件は2階層を使用できたことで、前述の2つのそれぞれの利点を別々に活かせたらという考えで計画を進めました。つまり1階はカウンターのみの構成でオープンなファサードでありながら外部に背を向けて座れるため利用者も気兼ねなく、また屋台のように外から並んだ背中が見れる光景は通りがかりでも立ち寄りやすいあたたかい雰囲気が出せます。変わって2階はゆったりとくつろげるテーブルスペースで、1階とは違う上品な空間としています。

 

またこの案件は十分なコストパフォーマンスを発揮できたものであって、決して良いものとは言えない既存の家具を活かす提案をいたしました。当初はあまり賛同いただけなかった提案でしたがコスト面で採用していただき、出来上がって見ると誰が見てもどれが既存の家具かわからない状態をつくりあげることができ、その点を高く評価いただきました。

デザインは常にコンセプトとバランスから成り立つものと考えています。しっかりとしたデザインコンセプトのもとにバランスを崩しているものだけを入れ替えることでほとんど同じものでも見え方が大きく変わってきます。改修工事などでは何を変えて何を残すかという目利きの力が問われるのであろうと思います。

 

 

担当者 / 園田 泰丈 ※内装意匠設計 サインデザイン