スタンダードについての考察とシーンの設計

 

建築にも流行り廃りはあると思います。ここではファッショナブルな意味ではなく、大きな『ナガレ』のようなものとして捉えて考えています。

時代や場所によって変化する状況があり、それによって政策やメディアの関心などが動き、そこで多くの人にその時々に応じて植えつけられる認識や感覚といったものがあります。そうしたことに起因して建築もその時採用され易い工法があったり、使われやすい材料があったりするものです。

 

さて、こだわりの家をつくると聞いたとき多くの方が思い浮かべるであろう『オーダーメイド』。これに対しそのような家で敬遠されがちなのが規格製品です。

目的(創ろうとする建築)を達成するために建築の各部をオーダーメイドすることは勿論素晴らしいことであり、それは知識や技術を駆使しないと成しえない高度な選択であるがゆえに高い評価と満足度が得られることでしょう。しかし一つの手段の選択肢として捉えてみると、無限の創造が可能なオーダーメイドを選択することはむしろ容易であり、前述の『ナガレ』の中でリストアップされる製品や材料をどう扱うかということのほうが難易度が高く、それは現代の建築では無視できないような状況になっていると感じます。

 

例えば腕利きの大工がオリジナルに考案した立派な継ぎ手や仕口では法規的には通用しなかったり、同じ素材からできた製品でもある種の認定を受けているものとそうでないものとでは使用できるか否かという違いが出てきます。裏を返せば規格製品には『ナガレ』に適応する強味があり、コスト面や法的な課題を明確にクリアにしてくれます。私自身、建築を作品として見た時の質の高さは独自に熟慮されたディテールなしには突き詰められないと考えていますが、単純に住み手にとっての住宅のあり方を考えた時、動線・光・風など本質的な部分で丁寧に考慮を重ねたデザインプランを構築していけば、心地の良い建築というものはできるのだろうと感じています。

 

技術面や経済面の状況を考えた時、現在高いシェアを保つ規格製品等が時代のスタンダードになっていると捉えるならば、このような視点での設計手法をブラッシュアップしていくことも我々の重要な仕事の一つなのかもしれないと感じます。

 

 

 

話は変わって、建築計画の基本的な空間構成は平面図、断面図、立面図からできていると言えます。

水平方向の繋がりや広がりと動線を平面図が、その垂直方向を断面図が、外観の佇まいや全体のボリューム感など対外的な要素を立面図が担っています。それらを同時に考えていく際に私は『シーン』を設計することをよく意識しています。

 

朝起きて部屋を出る時、顔を洗って拭き終わったとき、家のそばまで帰ってきた時、靴を脱ぎ終わったとき、風呂から上がったとき…

五万とある瞬間の中で建築がどのように映るかということが重要だと思います。「ここから見ると良い景色が見える」とか、「ここにいると風が気持ちいい」など、その感覚自体はそれなりに存在するかと思いますが、その『シーン』が普段の生活の中で自然発生的に生まれることが大切だと考えます。

 

ここから見てくださいと支持するような見せ方でなく、暮らしの中で見える『シーン』に趣や温もりやユーモアがいちいち現れてくるような愛らしさのある建築。そういったものが人と自然と建築物の関係をやさしく取り持ってくれるのではないでしょうか。

 

 

担当者 / 園田 泰丈 ※設計・監理