研究レポート-No.002:つかわれかた

 

建築は往々にして完成した時に一番注目されます。

 

あくまで私個人の意見ですが、一番ハッとさせられる瞬間はその『つかわれかた』に触れた時だと思っています。

 

ドライな云い方に聞こえるかもしれませんが、特に自分が設計した建物の場合は完成形のイメージがあってそれに向かって創り上げていくので基本的には想定通りの仕上がりであるし、ある意味そうあるべきものでもあるからです。

 

勿論良い意味での想定外もあったりするので、そこには新たな発見や可能性を感じられる面白さもあります。

 

 

そもそも建物はつかわれるためにつくるのであって、そのことを大切に考えて設計の仕事をしています。

ですからたまに見かける光景として、綺麗にデザインされた外観に布団や洗濯物が干されている姿がミスマッチであったり、せっかく造り付けた家具にうまく物を収納できていなかったり、また店舗などでは品のあるファサードデザインにしたにもかかわらず、後から品のない看板がついていたりすると非常に残念に思います。

 

ですので私はできるだけ『つかわれかた』をふまえたデザインを心がけています。

 

散らかってしまうなら散らかっている姿が心温まる光景に見えるようなデザインを目指し、店舗では店のコンセプトや地域性、ターゲット層がきちんと調和が取れているのか検討を重ねて構築していくわけです。

 

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施設系の建築で一番印象に残っているのは10年前に訪れた金沢21世紀美術館です。

 

建築の構成もさることながら、その『つかわれかた』が現在の私の考え方の礎になったように思います。

 

この美術館は円形の平面構成で360℃からアクセスしやすい形をとっており、その外周部分が無料ゾーンに設定されています。兼六園をはじめとした様々な観光地や商店街などの人が集まるスポットが周囲を囲んでおり、周辺地域全体を一つの建物して捉えるならホールのような存在になっているのです。

 

それによって観光客や周辺地域の学生、家族連れなど老若男女が美術館の中や庭のスペースで休憩したり話をしたりしています。美術館などは一般的に決して多くの人が気軽に利用しがちな施設とは言えないと思いますが、そこらにある公園のようにつかわれていたのです。

 

このとき私は訪れる前にこの建物の完成前および完成当時の文献で設計者であるSANAAさんの語るコンセプトを拝見しておりました。

当時素人の学生ながらになんとなく読んで頭に残っていたコンセプトが、まさに目の前でその通りにつかわれていたことに感動したのを今でも覚えています。

 

 

代表 / 園田 泰丈