当ウェブサイトに登場する建築する動物たちについての解説を少し記しておきます。
人間社会では多くの人にとって建物はあたりまえに存在しすぎていて、普段の生活の中で誰が、どのような材料でどのように組み立て、どんな意味を成しているのかを考えている人あるいは理解している人は少ないのではないかと思います。
一方、動物の巣は住処としては勿論、様々な機能を備えながらも非常に本質的でピュアなつくりをしています。
ビーバーの巣は一見すると水面に枝などを集めて作られたドーム状のものが浮かんでいるだけですが、その内部は陸部分がありドーム上部には換気用の穴などもきちんとつくられています。一度水に潜らないと入れない構造のため、外敵から子を守ったり寒さをしのぐ機能がありますし、そもそも木の皮を食料とするビーバーにとって材料の枝はとても身近なものでもあります。
さらにこの構造は水位が変化すると危険なため、ビーバーたちは代々にわたって住処の近くにダムをつくります。最大級のものは700mほどのダムが出来ている場所もあるそうです。
当サイトに登場するオオニワシドリはオスとメスで別の巣をつくります。
メスは非常に簡素なお椀型の巣を低木の茂みなどに作り子を育てます。
それに対してオスは徹底した意匠性を発揮した巣をつくります。
まずは掃除をして辺りを均すことから始めます。
そこに枝等でトンネル状のあずまやをつくり、前庭を小石などで飾った後、最後に装飾品を集めて飾り付けていくのです。
中には木の実を噛み潰し巣に色を塗る物までいるそうです。
実はオスのつくるこの巣は交尾のためだけのもので、完成後に入口付近で踊りや歌を披露しメスを誘います。
交尾が終わるとこの巣の装飾にさらに改良を重ね、再び次のメスを誘う仕事に取り組むそうです。
デザイン=見た目、ゆえにデザインは機能と相反する…
そう考えている人が未だにいるようですが、私はそれは大きな間違いだと思っています。
命をつなぐためにただひたすら美しい巣をつくるオオニワシドリのオスは、命を生み出す『機能』を発揮させるために意匠設計を追及しているのです。
彼らに学ぶべきは『美しい』ということは個人の価値観ではなく、見る者の心を動かすという生き物にとって最も重要な『機能』であることだと私は考えます。
写真:『建築する動物』インゴ・アルントより
代表 / 園田 泰丈