近年の新建材は技術力の向上により機能性や意匠性だけでなく加工性や施工性、メンテナンス性など様々な点に特化したものが増えてきました。
さらには廃材利用によって生産段階での環境性の向上や低コスト化などを意識したものも増えたり、あるいは法改正などに対応するため防火性や耐久性の向上なども考慮された商品もあります。
しかしながらメリットばかりでないのも事実で、その特徴をよく理解して使い方を考えていかなければなりません。
新しい可能性に挑戦することはとても大切なことですが、日々生み出される新建材の使用を試みる際にはそれなりの責任を持って検討と考慮を重ねる必要があります。
本件では次の2点の新建材に着目しました。
一つは外壁の金属製サイディングです。当時出たばかりの新商品でしたが金属製サイディング自体の実例は多く、耐久性や施工性の面で一定の信頼はありました。
特徴は水平方向のジョイントラインを活かしたプレーンで伸びやかな意匠と、それに合わせた出隅役物の面取り形状でした。シャープな形状の建物ではブラックの外壁は威圧感が出過ぎてしまう嫌いがありますが、R形状でジョイントラインが連動した隅部の意匠が程よく全体の印象を和らげています。
しかし平部分のライン付ジョイントが一体でないため、施工コストがあまりに膨らむので使用を避けることとしました。
水平ラインの意匠は水平方向に延びる形状の方が活かせるにもかかわらず、そのジョイントの施工性とコスト性に難点があるというジレンマがあるのです。
二つ目は内壁です。珪酸カルシウム板をベースに珪藻土などを配合した天然材料のボードを使用しました。
調湿および消臭効果が期待でき、直貼りが可能なため下地板にクロスを貼る一般的な施工方法よりも施工工程が減り、その点についてはコストと工期の削減になります。
ただし、直貼りでの仕上げとなるため、ごまかしが効かず丁寧な施工が求められます。また加工性が良いとはいえ窓周辺はカットが多く発生し、カット部は面落とし加工も現場作業となるため目地割り作業も含めてその点ではかえって労力がかかります。
設計サイドとしては目地割りの指示によるサポートと施工性の悪い箇所やその周辺に部分的にクロス仕上げを採用し、施工時の逃げ道を作るなどの工夫を施しました。
本件は比較的スタンダードな仕様や構成をベースとしていますが、前述のような細やかな配慮の一つ一つが全体としての質の高さを保たせています。
建築設計は設計者としての立場だけでなく、施主、職人、施工会社、その他さまざまな立場からの視点で物事を捉え、円滑に工事が進み、施主の満足を得られる結果を出すための検討と考慮を重ねた判断をしなければなりません。
時代の流れと新建材との付き合い方は永遠の課題です。
担当者 / 園田 泰丈 ※設計・監理