夢のある仕事、そこにあるリアルと見えない葛藤

 

憧れて、学んで、始めて、続けて、

いまあらためて感じることは、建築デザインの仕事は夢のある仕事だと思います。

 

 

 

新しい事業やお店をスタートしてこれから挑戦しようとする人、転機を迎えて変化し進化しようとする人、家族や大切な人を守り育もうとする人…。

 

この仕事は様々なストーリーをもった人たちが前向きにエネルギーを発揮している、まさにその時にその人達に出逢い、その力添えをさせていただけるという素晴らしい仕事だと感じています。

 

そんな夢のある仕事だからこそ、そこに存在するリアリティーは容赦なく立ちはだかり、それを解決していく賢さと強さを持っていなければならないと思います。

 

 

 

コストや工期が限られたプロジェクトは、その多くを見据えてプランニングをしなければなりません。

 

建築デザインの問題要素の王道でもある『コストと工期』

 

それらに余裕がないということはお金で解決できる要素が少なく、リスクマネジメントが取りづらく様々なロスもほとんど見積もれない。さらにはそれらの対策や対応に割く時間も取れなければ、こちらもクライアントも判断に迷っている暇もないということです。

 

しっかりと信頼を得てリーダーシップを取り、責任を持って判断する能力が問われます。

 

 

 

改修工事である本件では『縁(えん)』や『絡(から)み』といわれる要素を徹底してそぎ落とすことに集中したプロジェクトになりました。

 

 

例えばAの工事が終わらないとBの工事ができない、これはA工事とB工事に『絡み』が発生しているという状態です。

 

設計段階でAもしくはB工事の作り方や設置方法に工夫をして、A工事とB工事を同時に進めることのできる工事に変化させて解決する。

 

 

他にも、Cの工事をするためにある部分を一度解体してその後復旧するというD工事が発生する。

 

この際もC工事の作り方や設置方法に工夫を凝らし、発生しうるD工事と『縁を切る』ことでD工事の発生自体を未然に防いでしまう。

 

 

さらにはこれらの作業を見境なくやるとリニューアルする範囲が限定され過ぎてしまい、全体の新装感が薄れて費用対効果が減少してしまうので、残す既存部分の仕上材料の色や質感との調和を考慮しつつ進めなければなりません。

 

 

これらのように問題を想定した事前の工夫により、設計段階でコストと工期を可能な限りコントロールする。

 

幾度となく悩んでは繰り返すことになるこの作業は、事情を知らない傍から見た人には非常に見えにくく評価もされづらい要素ですが、クライアントの満足度には直結してくる部分です。

 

 

 

 

 

担当者 / 園田 泰丈 ※設計・監理