「白」は学術的には最も明るい色です。
絵具などで例えられる減法混色の考え方では、色は混ぜ合わせるほど黒に近づいていきます。
この混色の考え方には多くの人に馴染みがあるため、白は余計な色が混ざっていない、清潔さや純粋さの象徴のようにイメージされることが多いのであろうと考えられます。
少しでも別の色が混ざるとすぐに白色が崩れるため、脆さや儚さなど、弱さを孕んだ印象を表現する色でもあります。
一方で、光の色で例えられる加法混色という世界があります。これは色を混ぜ合わせるほど明るく白に近づいていきます。
赤、緑、青のスポットライトをすべて一点に集めると白い光になるといった具合です。
光を放つ側の光源の立場と、光を受ける物体側の世界で考え方や捉え方が変わるというのは、
人間の世界にも似た面白さがあるように感じます。
さて近年では黒やグレイッシュな配色の家が増えたように感じます。
如何せん市場では流行り廃りが発生してしまいますが、私どもからすれば普遍的な事由からデザインを決定することが多い為、嘆かわしく感じることが多いのも事実です。
本件の分譲地周辺の新しい家もやはり暗い配色が多く、緑が少なくてアスファルトに囲まれた、どんよりとした印象の街並みになりつつあります。
住宅は確かに個人の持ち物の話ではありますが、秩序や調和無く成長した日本の多くの町は、個を主張したがために、個性や文化の色を失い、つまらないものになりました。
本件の真っ白な外観が街や人を明るく照らす存在になってくれればと思います。
あらためて一住宅のことであっても、街並みに与える影響を考えたり、調和をとろうとすることは大切だと感じました。
担当者 / 園田 泰丈 ※設計・監理