~間取りは数ある要点のうちのひとつにすぎない~

 

 

 

 

平面図は一般の方でも不動産情報の間取り図などで見慣れているため、それだけを見て色々と検討をしたり、工夫をこらしたりしようとしがちです。

 

平面計画が重要なことはもちろんですが、それ以外の様々な要素をすべて踏まえて考えると、あくまで全体の情報の一部にしかすぎません。

 

また多くの木造住宅の場合は、建物の構造躯体となる柱や壁と間取りが連動しているため、改修工事の際は安易な変更は禁物で、十分な専門知識をもっての判断が必要です。

 

 

本件のリノベーション計画では間取り(壁の位置)を一切変更していません。

 

既存の躯体の状態も良く、丁寧に造られ大切に使用されてきたことが伺えたことと、コストの低減や構造リスクの低減を考慮しての判断でした。

平面図で見れば一部の開口部の配置を除き、ほとんど変わっていないように見える計画ですが、出来上がった空間の印象や利便性は全く違うものとすることができています。

 

 

主要な工夫のひとつとして、内部の開口位置の変更と天井の形状変更により、視線の抜ける距離を拡張したことで、実質の広さを一切変更せず、体感の広さを大きく広げる工夫を凝らしています。

また開口位置の変更は室内動線にも変化を与え、プライベートな室要素とパブリックな室要素を以前より明快に分けることができており、空間のメリハリとストレスの少ない使用感を実現しています。

 

 

私たちのような建築設計者の細やかで入念な計画と、それに答えてくれる職人さんたちの細やかで丁寧な仕事の一つひとつが空間全体の質を支え、それが専門家でない人にも伝わる、味わい、深み、豊かさといったものに昇華していくものだと思います。

 

 

決して平面構成だけでは決まらない、建築設計の奥深さと可能性を具現化できた意義のあるプロジェクトになったのではないかと思います。

 

 

 

担当者 / 園田 泰丈 ※設計・監理